松戸市人権施策に関する基本方針
更新日:2025年2月17日
一 基本方針策定にあたって
1 策定の背景
20世紀における二度の世界大戦の反省から、人権問題は国際社会全体に関わる問題であり、人権の尊重が世界平和の基礎であるという考え方が主流になってきました。
国際社会では、世界人権宣言にはじまり、人種差別撤廃条約、国際人権規約、女子差別撤廃条約、児童の権利に関する条約など、人権尊重や差別撤廃に向けた数々の取り組みが行われており、1994年には「人権教育のための国連10年」、2004年には「人権教育のための世界計画」が決議されました。
本市では、平成10年(1998年)4月からスタートした総合計画の中で、人権尊重を最も重要な理念の一つに掲げ、基本的人権の理念が日々の暮らしのなかに生かされ、すべての人が差別や偏見による人権侵害で苦しむことのない、市民だれもが、かけがえのない人間として尊重され、いきいきと生活できるまちづくりをめざし、施策に取り組んできました。
本基本方針は、松戸市の諸施策を人権尊重という視点から改めて捉え直し、市としての人権に対する基本理念を明らかにするため、随時改定をしております。
2 人権問題の現状
今日、世界に目を向けると戦乱や貧困・飢餓などのため、教育の機会が与えられない多くの子どもたちや、十分な治療が受けられず、生命の危機に瀕している人たちがいます。
国内においては、性差別や子どものいじめ、外国人や被差別部落出身者への人権侵害などが依然残っています。本市においても、市内に地域改善対策事業の対象となる地域は存在しないものの、過去において被差別部落出身者に対する差別事件が発生しており、今後も再発する可能性があります。
また、最近ではインターネットによる人権侵害のほか、特定の民族などへの憎悪をあおるヘイトスピーチも発生しています。さらに、人権意識の高揚や社会情勢の変化にともない、いままで見過ごされてきたことが人権問題として顕在化したり、新たな人権問題が発生したりすることも予想されます。
戦後80年余を経過してなお、民主主義の根幹である基本的人権が十分守られていない状況のなかで、市職員はもとより、市民一人ひとりが人権感覚をみがき、問題意識をもって、人権問題の解決にあたることが求められています。
3 策定の理念
日本国憲法第14条では、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」としています。
しかし、現実には女性、子ども、高齢者、障害のある人、被差別部落出身者、外国人及び患者等にかかわる人権侵害は深刻な社会問題となっており、早期の解決が求められています。
これらの解決にあたって、行政の役割はきわめて重要です。すべての部署において、市職員は人権意識を高め、それぞれが人権行政の推進者としての自覚をもつ必要があります。
しかし、人権問題は社会全体の問題であり、その解決は行政だけの努力では不十分です。市民一人ひとりが人権意識をもち、互いに支えあい、平等な存在として認め合う関係を築くことが、問題の本質的な解決には欠かせません。
国連では人種、皮膚の色、性、宗教、政治的意見、財産、地位などによるいかなる差別または区別もなしに、すべての人が評価及び尊重される社会の発展を目指して2004年12月「人権教育のための世界計画」決議が採択されました。そして、この取り組みは、政府や自治体はもとより、人権擁護団体をはじめとするさまざまな市民が参加し、あらゆる機会において行われるべきであるとしています。
本市としてもこの視点に立ち、「このまちに人権文化を築くために」を理念として、基本方針に沿って人権施策を推進するため、市民と手を携えながら努力していきます。
二 基本方針
1 共通事項
すべての人権問題について、本市が共通して取り組むべき事項として、次の3項目を基本方針とします。
(1) 人権を尊重した行政の推進
市職員は、人権感覚をみがき、市民の人権擁護が本務であるとの認識をもち、常に人権を重視して職務を遂行します。
(2) 人権啓発・教育の推進
市民意識を把握した上で、あらゆる年齢、職業、社会層、出身、国籍、性別、思想・信条、身体的状況、経済的状況のすべての市民の、人間としての尊厳を守るための人権啓発・教育を効果的に行います。
(3) 相談・支援体制の整備
あらゆる人権侵害から市民を守るため、より相談しやすい相談体制を整備する等、相談者に対して問題の早期かつ適正な解決を図るための必要な支援を行います。
2 個別課題
人権問題は、国際的な問題から身近な問題まできわめて多岐にわたっています。当面、8項目の課題に関して基本方針を定めますが、現在表面化していないものであっても、今後人権問題として顕在化する可能性がある課題については、人権尊重の視点から適切な方針を策定します。
- 性差別(男女)の問題
性別による格差や不平等、差別、偏見、生きにくさなどのない、一人ひとりの人権が尊重され、自らの意思に基づき個性と能力を発揮できる「男女共同参画社会」の実現をめざし、「松戸市男女共同参画プラン」を推進します。 - 子どもの問題
すべての子どもが人格をもった一人の人間として成長できるよう、子どもの人権を擁護し、尊重するための施策を推進します。
- 高齢者の問題
すべての高齢者の人権が尊重され、いきいきとした生活が送れるよう、「松戸市高齢者保健福祉計画」及び「松戸市介護保険事業計画」に基づいた高齢者自立支援のための施策を推進します。
- 障害のある人の問題
障害のある人の社会への完全参加と平等をめざして、障害のある人の人権が尊重されるための施策を推進します。
- 被差別部落出身者の問題
被差別部落出身者の人権が尊重されるよう、啓発と相談のための取り組みを強化し、同和問題の早期解決のための施策を推進します。
- 外国人の問題
外国人の人権を尊重し、福祉の向上や地域参加の促進を図り、共に生きる市民として、平等で開かれた社会づくりのための施策を推進します。
- 患者等の問題
特定の病気に関する十分な知識がないことによる社会的偏見をなくし、人権に配慮した医療を行うとともに、患者等を支える社会づくりのための施策を推進します。
- 性的マイノリティの問題
性のありように関係なく、いきいきと自分らしく暮らせるよう施策を推進します。 - インターネットによる人権侵害
インターネット上で起こり得る人権侵害がないよう、施策を推進します。 - さまざまな人権問題
アイヌの人々、刑を終えて出所した人、犯罪被害者やその家族、ホームレス、災害発生時における人権侵害をなくし、すべての人が社会の一員として明るい生活を営むことができるよう、正しい理解と認識を深める教育・啓発施策を推進するとともに、自立支援の施策等を推進します。
3 施策の推進に向けて
人権問題は、市民生活のあらゆる場面にかかわりをもつものであり、施策の推進にあたっては、市民との協働を重視しながら、総合的、体系的に取り組む必要があります。
(1) 推進体制
この基本方針に基づき、人権施策を効果的に推進するために、行政組織内に「人権担当」を置き、施策の総合調整や評価を行います。
(2) 行動計画の策定
この基本方針に基づき、体系的かつ具体的な施策を推進するために、課題別に目標を定めるとともに、具体的な施策を明らかにする行動計画を策定します。
(3) 市民との協働体制
この基本方針に基づき、市民の英知を結集して実効ある取り組みを行うために、市民との間で共に学び、相互に啓発しあい、人権尊重を同じ文化として共有する協働体制の構築に向けて取り組みます。
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