「人と人のつながりを求めて『教育はみんなで』」 その3
更新日:2022年4月11日
-成人式を終えて-松戸市教育長 伊藤純一
令和4年成人式の様子
新しい年になったと思いましたら、オミクロン株の影響下、あっという間に2月に入ってしまいました。新型コロナウィルス感染症対策による混乱は長期にわたり、社会は様々な影響を受けています。
その中で、1月10日に成人式を執り行うことができました。昨年はオンラインによる式となりましたが、今年は昨年秋頃から新型コロナウィルス感染症による影響が若干少なくなったことを踏まえ、森のホール21に新成人の方々を迎えることができました。
松戸市の成人式は、式典とは言え、社会教育の一つとして、平成10年から新成人スタッフによる企画運営をその特徴としています。今回もスタッフの皆さんが昨年夏から7回の会議、4回の練習等を経て、当日までこぎ着けたものです。
とは言え、今回の成人式には不安がありました。新成人の皆さんは、このコロナ禍の影響を高校の卒業式から始まり、19才、20才と受けてきた人たちです。社会人として挑戦を始めた人、大学や専門学校で新たな学びを始めた人など、お一人お一人が新しいスタートを切った方が多いはずなのに、勤め先にも学び舎等にも毎日のようには行けず、我慢を強いられた日々を過ごしてきた人たちです。
ここのところの社会の流れの、人と人とのつながり、あるいはコミュニケーションの在り方に大きな危惧を抱いている私としては、二十歳前という自立に向けての繊細な時期に、そのような影響を受け、果たしてどのような式になるのか、本当に不安でした。
しかし、総勢16名のスタッフの皆さんと会場の森のホール21に集っていただいた3000人を超す皆さんとが一緒になって創り上げられた見事な式となりました。
そのタイトルは「翔(かける) ~夢への再出発~」と言うものでしたが、4人の代表メッセージの内容は、それぞれに、社会や世界を俯瞰する力、自身の生き方を考え、選ぶ力、故郷松戸を思う心、総じては足下をしっかりと見据えて、これからの自分自身を高めていく力を感じました。新成人の皆さん、有り難うございました。
さて、立春も過ぎ、日差しに温かさが少し増して、本年度も残り少なくなりました。来年度は?と考えると、果たして、どのような状況になるのでしょうか。これまでですと、特に昭和、平成の時代ですと近未来は想像がつきました。しかし、どうでしょう。世界の状況や経済、政治に加えて、明日のコロナ対策さえ、定かではないという毎日です。
このような状況を、マネジメントの研究者たちは数年前からブーカ〔VUCA(注釈1)〕と呼んでいます。そして、ウーダ(OODA)ループというマネジメント手法を提唱しています。ウーダでは、一つ目のOはObserve「観察」、二つ目のOはOrient「状況の理解、判断」、DはDecide「決定」、AはAction「行動」です。これがらせん状に続くので、ウーダループと呼ばれます。
聞き慣れたPDCAやPDSは通用しないのでは?ということです。ブーカの通り、変動し、不確実で、複雑、曖昧な実態をこれまで以上にしっかりと見ることの大切さを説いていると受け取っています。
もう、昭和でも平成でもありません。社会の方向性が変わりなく、明確であった時代では、状況の多少のブレを分析する必要など無かったかもしれません。しかし、明日の動きすら、不明確な現在は状況の詳しい分析無しでは前に進めません。
新成人のスタッフの方から先日ご丁寧な手紙をいただきました。市及び関係の皆さんへの感謝の手紙でした。
いつの時代でも若者の価値観やコミュニケーション能力などにいろんな意見がありますが、これからの難しい時代を切り拓いていく力を着実に身につけていらっしゃるなあ、と感じました。新しい年の初めに、新たなつながりを創る力を感じることができたことは大きな喜びです。改めて、若人の未来にエールを贈りたいと思います。
この社会、文化、教育の大きな転換期に、若者たちへと時代を引き継ぐ礎を作る責任を果たすために、それぞれの基盤を見つめ直すことが不可欠です。何のために、何が必要なのかと確認しながら教育行政を進めていきたいと考えます。
今年も宜しくお願いします。
(注釈1)ブーカ(VUCA)
VはVolatility変動性、UはUncertainty不確実性、CはComplexity複雑性、AはAmbiguity曖昧性、ブーカという造語で表しています。常に変動し、確かでなく、しか も複雑で曖昧な状況がある、総じて予測不能な社会を表す言葉として使われています。
新成人のスタッフ一同