市立博物館学芸員による松戸の歴史解説「貝の花の不思議な土器」
松戸の縄文遺跡からは食べ物の煮炊きに使った土器、狩りや獲物の解体に使った石器などさまざまな道具が出土し、当時の生活の様子を考えることができます。ところが、見つかる道具の中には何に使ったのかよく分からない、不思議な形をしたものもたくさんあります。
小金原8丁目にある貝の花遺跡で見つかった異形台付土器(写真参照)もその1つです。台の付いたお椀のような器に、急須の口のような筒状の突起が2つ付けられています。穴が開いているので液体を貯めることはできません。中で火を焚いて穴から煙を出したのではないか、という説もありますが、火を焚いた痕跡が残る異形台付土器は今のところ1つも見つかっておらず証拠はありません。
異形台付土器は縄文時代後期の中頃から晩期の初めごろ(約3800~3000年前)に作られ、北海道から長野県まで東日本の広い範囲に分布し、最近では島根県でもよく似た特徴をもつ破片が見つかっています。最も多く見つかっているのは千葉県です。何に使ったのかは分かりませんが、地域を越えて必要とされた、価値のある道具だったのでしょう。
貝の花遺跡では他にも粘土でヒトをかたどった 土偶(どぐう)や、細長い石を平たく磨いた 石剣(せっけん)など不思議な形の道具が見つかっています。どれも実際にどのように使われたのかは分かっていません。市立博物館で展示していますので、実物を観察してどのような使い方をしたのか想像をめぐらせてみてはいかがでしょう。
異形台付土器(貝の花遺跡出土)
常設展示室で展示中の異形台付土器と土偶(いずれも貝の花遺跡出土)
貝の花遺跡(貝の花公園)