「SDGs未来都市」に選定された松戸市 ~千葉県立小金高等学校のSDGs探究活動を紹介
更新日:2024年5月28日
地域と高校生たちがコラボして取り組むSDGs探究活動
2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓うSDGs目標達成に向けて、松戸市は積極的に取り組んでいます。
2022年には、自治体によるSDGsの達成に向けた取り組みが国から評価され、松戸市が「SDGs未来都市」に選定され、関係省庁タスクフォースにより支援を受け、SDGs目標達成に向けてさらに加速しています。
そんな松戸市で、企業や自治体などとコラボしてSDGsへの積極的な取り組みをしている高校生たちがいます。今回は千葉県立小金高等学校のSDGs探究活動や、5月15日に開催された発表会の様子をご紹介します。
※この記事の情報は、2024年5月28日現在のものです。
地元の高校生たちもSDGs探究活動からアクション
千葉県立小金高等学校
松戸市の高校生たちも、SDGs目標達成に向けて動き出しています。千葉県立小金高等学校(以下、「小金高校」)も、そんな注目の活動をしている学校のひとつです。小金高校では、2019年からSDGsをテーマに、1年次、2年次で探究学習に取り組んでいます。
小金高校58期生(3年生)はこれまで、71のチームに分かれ、「暮らしと健康(26チーム)」、「防災(27チーム)」、「国際理解(18チーム)」という3つのテーマについてそれぞれが課題を抽出し、解決に向けた取り組み・考えを深めてきました。
その集大成となる「2024 58期生 総合的な探究の時間 成果発表会」が5月15日に同校体育館で開かれ、各チームがプレゼンボードに探究内容を表示し、来場者へこれまでの取り組みと今後の活動などについて説明しました。
小金高校58期生(3年生)全員によるポスター発表の様子
4つの「校外活動チーム」が関係者たちに活動報告
また、71チームと別に「SDGsについてさらに探究したい」という生徒たちで構成した4つのゼミ「校外活動チーム」が、協力企業や教育関係者、松戸市関係者などコラボ・サポートメンバーらを前にこれまでの活動について報告するプレゼンテーションに挑み、多様な質問にもしっかり答えていました。
この中のひとつ「チームインディペ」の「身近な無駄をポジティブに地域創生~ボナペティ小金パン~」プロジェクトは、SDGs探究活動を表彰する「SDGs探究AWARDS 2022」で中高生部門優秀賞を受賞。また「チームすまいる」の「不要となった参考書を活用して教育格差を無くす未来『すまいる for study』」は、高校生がチームで社会課題解決のアクションアイデアを考えるコンテスト「SDGs QUEST みらい甲子園」で2023年度千葉県大会 トヨタ勝又グループ賞を受賞しています。
椿先生「パッションがないと何も動かない」
同校の授業「総合的な探究の時間」や4つの校外活動チーム(椿ゼミ)でSDGsの活動を率いる椿先生にお話を伺いました。
「私は教える側ではなく、あくまで伴走者であって、 SDGs探究学習をプロデュース・マネジメントする立場です」という小金高校学習マネジメント・キャリアカウンセラーの椿 仁三千(つばきやすみち)先生は、小金高校と松戸市がコラボして3年を経た SDGs探究学習についてこう語ります。
椿 仁三千先生
「SDGs探究学習と言っても、例えば貧困や自然・環境などの抽象的なテーマだと、どうしても他人事というか、どこか形骸的にとらえてしまう生徒もいますが、『松戸市の〇〇』といったアプローチにすると、一気に“自分ごと”として課題と向き合うようになります。
いまの生徒たちはできるだけ早く答えにたどり着くことを求めがちですが、これからの時代は『答えがない課題』について考えられる能力が求められています。これが探究的思考です。自ら課題を見つけ、課題に向けて広い視野でコミュニケーションをとりながら、人とつながり解決へと導いていく、この学びが探究学習です。
カチッとした『答え』があるわけじゃない様々な課題に直面したとき、思考の多様性がないと最初の一歩を踏み出すことができません。小金高校の探究学習では、地元・松戸市の各分野の人たちと関わりながら、“つながり”をきっかけに思考の幅を広げ、チームで課題を解決へと近づけています。
探究学習を通して、ひとつの視点ではなく、ひとつの解ではなく、広い視野でモノ・コトを考える“チカラ”がつくはずです(椿先生)」
様々な取り組みを実践する校外活動チーム
(1)マイクロプラスチックを回収、アクセサリーへ再生
チームオーシャンズ「マイクロプラスチック・アクセサリー Reduce大作戦~海の豊かさを守ろう~」は、街から流れ出たプラスチックごみ「マイクロプラスチック」問題に着目し、“Reduce”という観点から、こうしたマイクロプラスチックを回収し洗浄・分類、再びアクセサリーの材料として活用し、ビニール包材を使わずに梱包した商品をイベントなどで販売。その収益を「浦安三番瀬を大切にする会」へ寄付するなどの活動を続けています。
チームオーシャンズ
また、マイクロプラスチックを根本的に削減すべく、マイバッグやマイボトルを持参し、包材の少ない商品を選ぶなどで「ごみを減らす」、「環境に配慮した素材の商品を選ぶ」といったアクションも呼び掛けています。
3代目となるチームメンバーは、「こうした活動が途絶えてしまわないように、下の学年にも引き継いでいってほしいと思っています。今年になって、様々なイベントに出店するようになって、色々な人たちとつながれたことが嬉しかったです。今後も人とのつながりを大事にしながら、この活動を広めていけたらいいなと思います」と話してくれました。
(2)中学時代に使った参考書を貸し出し、好循環目指す
チームすまいるの「参考書で子どもの学びをサポート」では、家庭の経済事情による教育格差に着目。新入生から中学時代に使い不要になった参考書を回収し中学生たちに無料で貸し出し、教育費が家計の大きな負担と感じている家族を支えるプロジェクトです。
チームすまいる
このプロジェクトには、松戸市民交流会館「すまいる」が協力し、同館で貸し出しシステムを構築。「すまいる」の利用者も増加し、捨てられる運命だった参考書が利活用されるという好循環を生み出しました。
これまでの活動を今後どのように活かしたいか尋ねると、「こうした課題にすごく関心があり、大学でも社会課題解決に向けたアクションを起こしていきたいと思っています」「薬学に興味があり、貧困などで医療を受けられない方がいる現実や、難病治療への薬が高額で、薬を手に入れられない方もいます。そうした課題を解決へとアプローチできるような場を大学でもつくっていきたいと思います(チームメンバー)」
(3)規格外の地元農産品を商品化(地産地消)
チームインディペ「身近な無駄をポジティブに地域創生~ボナペティ小金パン~」は、地元農家の応援や地産地消、フードロスの解決などをテーマに、販売商品にならない地元農産品を使ったパンの商品を開発し、松戸市の協力を得て街のベーカリーやイベントなどで販売するプロジェクトで、このチームメンバーが4代目。
チームインディぺ
プロジェクト4年目を引き継いだメンバーたちは、 NEC我孫子フィールドや柏の葉スタジアム(ラグビー)、船橋アリーナ(バスケットボール)などの会場でもプロジェクト商品を販売。今後このチームは、新商品の開発や校内販売も構想しています。
また、SNSなどでこうした取り組みを発信し、同世代の学生たちが地域ブランドとフードロス削減を共有し、地産品ブランドの向上へとつなげ、地域の未来を変える原動力を担っています。
「先輩から引き継いだこのプロジェクトで、色々な人とつながりながら、集客のコツや松戸市以外で出店するためのハードルをクリアする経験などを得ました。こうした経験を大学生活や社会へ出ても活かしていきたいと思っています(チームメンバー)」
(4)船に乗って地元漁業の課題を知り、魅力を発信
「日本財団『海のごちそうプロジェクト』」では、生物部の男子生徒が日本財団が展開する「海のごちそうプロジェクト」に参画し、イベント会場で千葉産品「御菜浦生のり佃煮」「船橋バクダンコロッケ」を紹介・販売しました。
「海のごちそうプロジェクト」参画メンバー
また、千葉産品を来場者に紹介・販売するにあたり、メンバーは実際に船橋漁港を見学。船橋市漁業協同組合や漁師から現在の漁港課題について知り、さらに船に乗って海苔や牡蠣の養殖場を見学しました。
さらに、「売れ残ってしまった冷凍のバクダンコロッケを子ども食堂に寄附したところ、子どもたちが笑顔でおいしそうにコロッケを食べてくれたと聞き、とても嬉しかったです」と当時の様子を振り返ってくれました。
「今回の活動の中で、人とのつながりの大切さを実感しました。高校生活の中で、こうした活動に参画できたのは有意義だったし、何より楽しかった。この経験を、大学農学部生活でも活かしていきたいです(メンバー)」
小金高校の生徒たちが“前のめり”で取り組む SDGs探究学習の“前進力”は、生徒たちから湧き出るアツいパッションが源になっている‥そんな地元・松戸の知られざる“チカラ”を感じた発表会でした。
こうした同校のサステナブルな活動が代々受け継がれ、地域とつながり、今後も広がっていくことでしょう。
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